そのへんの犬の話

 普通の犬である。
 ほかの犬と同じく、その犬は賢くなりたかったので、賢くなろうとつとめた。賢そうな素振りだけが身についた。けれども賢くなった気分にはなったので、そのような考え方をした。
 あまりのくだらなさに半分気付いたとき、犬は死にたくなった。犬としてひどく情けなかったので死にたかった。
 そこで犬は田舎の道を走った。走っているうちに犬は楽しくなった。いつかトラックがやってきて犬を轢くのだろうか、それとも誰かが見つけて拾ってくれるだろうか。それにもまた、情けなくなった。
 犬は走るのをやめた。