雨粒が照明で瑠璃色ビーズに見える一瞬。いま一緒にいるひとは気付いているんだろうかと喉元まで言葉を押し上げてみるけれど、なんでだか言えない。
 帰路の雨は好きなほうで、自転車を飛ばしながらも濡れることが楽しかったりする。顔面に雨が当たるのは少し困るのだけど、道路に反射する光が滲んでいたりして趣がある。帰り着けば拭くなり脱ぐなりすれば良いのだから別にいい。
 雨で思い出したけど、カタツムリは雨が好きなんじゃなくて、土中の巣が水没するから脱出してきているだけなのだと雨が降るたびに言ってる気がする。

 もっと何年も経ってる感覚があったけど、「あのころ」はそんなに遠くなかったんだと気付く。過ぎたことを思い出に変換するのが早いから、ずっと前のことだと思ってた。