鼻が詰まっているので、がんばって鼻から息を吸うと、深海からレポートしている人みたいな音がする。人として口を開けっ放しにするのはいささか絶えがたいのだけれど、呼吸に努力が必要なのもどうか。たとえば魚には口もエラもあって、じゃあ人間のデザインとしてエラにエラが本当にあったっていいんじゃなかろうか。肺を左遷するほど冷徹にはなれないので、ここはひとつ彼の席はそのままに、エラは新人なので先ずは空気から空気を取り入れる仕事をしてもらう。呼吸器は重要なのでゆくゆくは彼に命運をゆだねることになるのだろう。最初の受難はこれからやってくるであろう花粉。あんなにぱっくり粘膜が口を開けていてしかもフィルター機能が無いなんて。エラ詰まりエラ水。花粉症には鼻の粘膜を焼く治療があるので、いっそエラも焼いてしまった方がジャケットの肩が濡れなくていいかもしれない。なんかエラだめね。あるだけ無駄どころかなんかエラ水駄々流しでむしろ厄介。やっぱり自分の道はここじゃなかったと去るエラ。喜ぶ鼻。じゃあお前ちゃんと仕事しろよ。