怒るということが出来なくなった。どういう風に?どのポイントに対して?なんかそういうのが今はさっぱりわからなくて、もやもやして、ボリュームを上げた音楽を流して考えないようにしている。
 怒るとか批判するとかいうのは、内容が正しくても和は乱れるわけで、そういうのが嫌だったから円く収める側になろうとして、だいぶなったけれど、これもまた私の思う「大人」ではないような気がする。
 短気なのかもしれない。一時であれ不穏な空気というものに耐えられない。確かに敵・味方というのより中立になりたかったけど、これは違う。なだめたり機嫌をとったりするのは正しくないのかもしれない。
 失うのが怖いのは少しある。能動的な「何も要らない」が終わって。でも、それ以上に「どうでもいいや」感が強いのかなとも思う。「サーカスの馬」。
 「サーカスの馬」に出てくるヨシオカ少年はダメな奴で、怒られても殴られても「どうでもいいや」。町へやってきたサーカスの裏側に、背骨のひどく曲がった馬を見つけて、馬もまた「どうでもいいや」と思っているのだろうと考える。ところが本番になると馬は活き活きと曲芸を見せて、ヨシオカ少年は衝撃を受ける。
 それからヨシオカ少年はどうなったんだったかなぁ……物語はそのあと数行で終わったんだけど。