028:『バカの壁』養老孟司

バカの壁 (新潮新書)

バカの壁 (新潮新書)

 私たちがぼんやり思っていることを明確な言葉にした本。かな。ただ、少しだけ詭弁チックな部分もある気がする。なお、最初の方に「絶対はないけどおそらく絶対」みたいな話があるのでそういうことだと思う。
 第三章「「個性を伸ばせ」という欺瞞」は日本テレビ世界一受けたい授業」に著者が出ていたとき話していたこととほぼ同じだった。マニュアルはマニュアルで現時点の最短距離と思えば悪くないんじゃないかなあ。みんながみんな発見をしようとしたら効率が悪い。
 第四章「万物流転、情報不変」は難しかった。「情報」っていうのは何を指していたんだろう。プラトンイデアの話は面白かった。「細かく見ればどれも違うリンゴをみんなが「リンゴ」として同じものと認識しているのは、それを包括する完璧なリンゴ像がみんなの中にあるからだ」というもの。倫理で一回くらいやってそうなんだけどなーまたそっち系も読みたい。
 暖かい教育や共同体を期待しにくいのは日本の資本主義が短期決戦するやり方だからかな。なんで短期決戦になるかというと偉い人の任期に合わせてあるから。
 あと、宗教というのも支配するのに便利なツールだと思います。信じている一元論の神に反対する理由がない。それ以外を悪とすれば人民は容易に歩兵となる。
 第八章「一元論を超えて」にて、お金の基準はエネルギーだろうということを書いてあったけど、最近半村良がゴールドゴールド言うのでそっちの方の金はどうしたらいいんでしょう。でもエネルギーのが納得しやすいんだけど。あ、井上ひさし吉里吉里人」でもお金(マネーの方)は金(ゴールドの方)が基準だったのです。しつこいようだけれども金(ゴールドの方)の価値がいまいちわからない。
 「人生は家康型」ということで、自分で考えるよりも教典を読んで結論がある方が楽だからそっち行っちゃうみたいな話。絶対善・悪というのは現実ではあまり無いことだからかな。
 あ、帯にある「「話せばわかる」は大嘘」というのは例のひとつとして「相手に理解する気がないから」とのことでした。
★★★☆☆